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クリニック開業をお考えの先生へ 最終更新:2026年6月

医療モール
(クリニックモール)開業

複数の診療科が一つの建物・区画に集まる「医療モール(クリニックモール)」は、近年の開業スタイルの主流のひとつです。集患の相乗効果や初期投資を抑えやすいといったメリットがある一方、賃料・共益費の負担やデベロッパーの規約、退去時の原状回復など、戸建て開業にはない注意点もあります。このページでは、医療モール開業のメリット・デメリット、費用の目安、向いている診療科、契約前にチェックすべきこと、開業までの流れまで、医業専門30年超の湯沢会計事務所が率直に整理します。

最大の魅力
集患の相乗効果
他科との相互紹介・ワンストップ受診で来院動機が増える
初期費用
戸建てより抑えやすい
土地取得・建築費が不要。内装と保証金が中心
成否を分けるもの
契約条件の見極め
賃料・規約・競合科の入居制限を契約前に精査
1. 基礎

医療モール(クリニックモール)とは

医療モールとは、内科・小児科・整形外科・調剤薬局など複数の医療機関・薬局が一つの建物や区画に集積した形態の総称です。「メディカルモール」「クリニックモール」とも呼ばれます。立地・建物のタイプにより、おおむね次の類型に分けられます。

類型特徴主な集患の前提
ショッピングセンター内型商業施設・スーパー・駅ビル内のテナント区画に複数科が入る。買い物ついでの受診を取り込みやすい施設自体の集客力・通行量
調剤薬局併設型調剤薬局が核となり、その周りに複数の診療科を誘致する。薬局の門前需要が前提。最も一般的なモール形態処方箋応需・近隣住民
ロードサイド型幹線道路沿いに駐車場を備えた独立棟・区画として複数科が集積。車での来院が中心の郊外型商圏人口・車のアクセス
駅前・ビル型駅前ビルの複数フロアに各科が入居。通勤・通学導線と高い人口密度が前提駅利用者・徒歩商圏

いずれの類型でも、開業医はモールの一区画を賃借して開業するのが基本です(分譲型もあり)。土地・建物を自前で用意する戸建て開業とは、費用構造もリスク構造も大きく異なります。

2. メリット

医療モール開業のメリット

医療モールが選ばれる理由は、戸建て開業にはない「集積の効果」と「初期投資の抑えやすさ」にあります。

  • 集患の相乗効果:複数科が集まることで「あの場所に行けば一通り診てもらえる」という認知が生まれ、各院単独より来院動機が高まります。
  • 相互紹介がしやすい:内科から整形外科へ、小児科から皮膚科へ、といった院間の紹介がモール内で完結。患者の利便性が高く、紹介・逆紹介の流れも作りやすくなります。
  • 初期投資を戸建てより抑えやすい:土地取得費・建物建築費が不要で、内装工事費と保証金が中心。開業資金の総額を圧縮しやすいのが大きな魅力です。
  • 駐車場・共用部を共有できる:駐車場・待合の一部・トイレ・エレベーターなどの共用部を各院で分担。自前で全て用意する戸建てより負担が軽くなります。
  • 開業時の認知が早い:調剤薬局や核テナント、既存の他科がすでに集客しているため、ゼロからの集患より立ち上がりが早い傾向があります。
  • 診療に専念しやすい:建物管理・共用部の清掃・警備などは管理会社が担うことが多く、施設運営の手間が減ります。
3. デメリット

医療モール開業のデメリット・注意点

メリットの裏側には、賃貸であること・他者と空間を共有することに由来する注意点があります。契約前にこそ直視すべき点です。

  • 診療圏の競合と被るリスク:同じモール内・近隣に同科が入ると患者を奪い合います。入居前に同一・競合科目の有無を必ず確認すべきです。
  • 賃料・共益費が固定費としてのしかかる:戸建ての自己所有なら返済が終われば家賃負担は消えますが、賃貸は払い続ける固定費です。立ち上がり期の資金繰りに直結します。
  • デベロッパー・管理会社の規約に縛られる:営業時間・看板・内装・設備の制約など、モールの管理規約に従う必要があります。独自の運営方針が通らない場面もあります。
  • 他科・核テナントの動向に左右される:核となる薬局や集客力のあるテナントが撤退すると、モール全体の集患力が落ちます。自院の努力ではコントロールできないリスクです。
  • 退去時の原状回復負担:賃貸借契約では、退去時に内装を原状回復する義務を負うのが一般的。医療用内装は復旧費が高額になりがちです。
  • 契約更新の不確実性:定期借家契約の場合、更新が保証されず、再契約できないと移転を迫られます。長期の経営計画に影響します。
  • 増床・拡張がしにくい:区画が固定されているため、患者増に伴う拡張は隣接区画の空きに依存します。
「賃料が安い=有利」とは限りません。賃料の安さの裏に、商圏人口の少なさ・通行量の弱さ・核テナントの不在が隠れていることがあります。賃料だけでなくその立地で何人の患者が見込めるか(診療圏調査)とセットで判断してください。
4. 費用

費用の目安 ── 戸建て開業との比較

医療モール開業は、戸建て(土地取得・建築)と違いテナント内装・保証金(敷金)・共益費が費用の中心です。下表は当事務所の標準モデルに基づく概算レンジで、診療科・坪数・地域・物件条件により大きく変動します。あくまで全体感をつかむための目安としてご覧ください。

費目医療モール(賃借)の目安戸建て開業の目安
土地取得費不要(賃借のため)立地により数千万円〜(購入の場合)
建物建築費不要建築する場合 数千万円〜
内装・設備工事概算 1,500〜3,500万円(坪単価の目安 60〜90万円)概算 1,500〜3,500万円(同程度)
保証金・敷金概算 賃料の6〜12ヶ月分(数百万〜1,000万円超)原則不要(自己所有の場合)
毎月の賃料概算 月30〜100万円(立地・坪数で大きく変動)自己所有なら返済完了後はゼロ
共益費・管理費概算 賃料の1〜2割を毎月上乗せ自己管理(自院で負担)
医療機器診療科により大きく異なる(両形態で共通)
あわせて読む:診療科目別の開業資金の内訳は「診療科目別 開業資金(表形式)」で、現在の自己資金・規模からの試算は「開業資金シミュレーション」でご確認いただけます。モールか戸建てかは、初期投資の差だけでなく「毎月の固定費」と「将来の家賃負担」まで含めた総コストで比較するのが要点です。
5. 適性

医療モールが向いている診療科・先生

向いている診療科 ── 外来回転型と好相性

医療モールは、多くの患者が短時間で受診する「外来回転型」の診療科と相性が良いとされます。モールの集客力・他科との相互紹介を活かしやすいためです。

  • 内科・小児科:地域のかかりつけ需要が大きく、他科への紹介・逆紹介の起点になりやすい
  • 皮膚科・耳鼻咽喉科:来院患者数が多く、買い物・通勤ついで受診と相性が良い
  • 整形外科・眼科:リハビリ・検査で通院頻度が高く、駐車場の共有メリットが効きやすい
  • 歯科:定期通院が多く、モール内の他科との患者の重なりが見込める

向いている先生

  • 初期投資を抑えてスピード感を持って開業したい先生
  • 土地・建物の取得や施設管理に手間をかけず、診療に専念したい先生
  • 立ち上がり期の集患リスクをできるだけ下げたい先生

相性が低いケース

在宅医療(訪問診療)に特化する方針の場合、外来患者の通行量に依存するモールの利点が活きにくく、固定費(賃料)だけが重くのしかかることがあります。自由診療中心で独自の空間演出を重視する場合や、大型機器で広い専有面積・特殊設備を要する診療科も、規約・区画の制約がネックになりやすい点に注意が必要です。

6. 契約前確認

契約前にチェックすべきこと

医療モール開業の成否は、契約条件の見極めでほぼ決まります。「良い物件があったから」と契約を急ぐ前に、次の項目を必ず確認してください。

  • 同一・競合科目の入居制限:同じモール内・近隣に同科が入らない取り決め(競合避止)があるか。将来の新規入居も含めて確認する。
  • 診療圏調査の結果:その立地で見込める患者数・商圏人口・競合の状況。デベロッパー任せにせず、独立した立場での調査を行う。
  • 賃料・共益費・更新料の総額:表示賃料だけでなく、共益費・管理費・更新料・看板使用料など毎月/更新時の総支払額を把握する。
  • 定期借家か普通借家か:定期借家は更新が保証されない。契約期間・再契約条件・中途解約の可否と違約金を確認する。
  • 管理規約の内容:営業時間・休診日・看板・内装・設備変更の制約。自院の診療方針と矛盾しないか。
  • 駐車台数の確保:来院患者数の見込みに対して十分な駐車台数があるか。共有か専用か、不足時の扱いはどうか。
  • 退去時の原状回復範囲:どこまで復旧義務を負うか、医療用内装の解体費の負担はどちらか。
  • 核テナント・薬局の安定性:集客の核となる薬店・テナントの契約継続性。撤退時のモール全体への影響。
  • 将来の増床・移設の可否:患者増に対応できる区画の融通余地があるか。
テナント契約書は必ず専門家のチェックを。賃貸借契約は一度結ぶと長期に拘束され、特に定期借家・原状回復・競合避止条項は後から覆せません。契約締結前に、税理士・必要に応じて弁護士に契約書と資金計画の両面を確認してもらうことを強くおすすめします。
7. 流れ

医療モール開業までの流れ

情報収集から開業まで、一般的にはおおむね1年〜1年半を見込みます。各段階で立ち止まって判断することが、後悔のない開業につながります。

段階主な内容
① 情報収集医療モール物件の情報を集める。デベロッパー・薬局・開業支援会社・税理士からの紹介ルートを確保
② 診療圏調査候補地の商圏人口・競合・通行量・将来人口を独立した立場で調査。見込み患者数を試算
③ 区画・条件交渉区画・賃料・共益費・保証金・契約形態・競合避止条項などを交渉。管理規約を精査
④ 資金計画内装・保証金・運転資金・自己資金を整理し、事業計画書を作成。融資の事前相談を進める
⑤ 契約賃貸借契約を締結(締結前に契約書を専門家確認)。融資の正式申込み
⑥ 内装・準備内装工事・医療機器の選定と搬入・スタッフ採用・各種届出を並行で進める
⑦ 開業内覧会・近隣周知を経て開業。立ち上がり期の資金繰りをモニタリング

当事務所の結論

医療モールか戸建てかは、優劣の問題ではなく診療科・診療圏・資金計画次第です。外来回転型で初期投資を抑えたいならモールが有力ですが、毎月の賃料という固定費を、見込み患者数と返済計画に照らして必ず数字で比較することが欠かせません。「賃料が払えるか」ではなく「その立地で何人診られるか」から逆算するのが、失敗しないモール開業の出発点です。

そのモール物件、本当に「先生に合った開業」ですか

医療モールの物件は、デベロッパーや薬局からの紹介で動き始めることが多く、勧められるまま契約を急いでしまいがちです。湯沢会計事務所は医業経営支援30年超の実績をもとに、診療圏調査の見方、賃料・契約条件の妥当性、戸建てとの総コスト比較、資金計画と融資申込みの支援までを中立の立場でサポートします。物件を比較している段階のご相談も歓迎です。初回相談は無料です。

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