医療法人には、従来の事業報告書等(いわゆる決算届)に加えて、病院・診療所ごとの経営情報を毎年都道府県に報告する義務が課されています。「うちは対象なのか」「何を・いつまでに・どうやって出すのか」「出さないとどうなるのか」── 医業専門30年超の湯沢会計事務所が、診療所規模の医療法人の目線で解説します。
この制度は医療法等の改正により創設され、令和5年(2023年)8月以降に終了する会計年度から適用されています。報告された情報は、国が整備する医療法人経営情報データベース(MCDB)に蓄積され、医療従事者の処遇改善や医療政策の企画・立案などに活用されます。
重要なのは、これが従来の事業報告書等の届出と並ぶ「もうひとつの提出義務」だという点です。決算届を出しているから大丈夫、ではありません。毎年度、①事業報告書等の届出、②経営情報等の報告、の2つを期限内に提出する必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象法人 | 原則すべての医療法人(一人医師医療法人・診療所のみの法人を含む) |
| 対象外となる法人 | 社会保険診療報酬の所得計算の特例(いわゆる四段階税制)の適用を受ける小規模法人。ただし「報告対象外医療法人」である旨を所定の様式で報告する必要があり、何も出さなくてよいわけではありません |
| 提出期限 | 毎会計年度終了後原則3ヶ月以内(例:3月決算なら6月末まで)。公認会計士・監査法人の監査を受けなければならない大規模法人は4ヶ月以内 |
| 提出先 | 主たる事務所の所在地の都道府県知事 |
| 提出方法 | G-MIS(医療機関等情報支援システム)で様式をダウンロードし、入力のうえアップロードする方法が原則。WAM NET経由の報告や、事業報告書等の届出と併せた書面(郵送)提出も認められています |
報告様式は病院用(様式1)・診療所用(様式2)・報告対象外医療法人用(様式3)に分かれています。診療所用様式では、医業収益(入院・外来等の別)や、給与費・材料費・委託費・減価償却費といった費用の内訳を、施設(診療所)ごとに記載します。複数の診療所を持つ法人は施設の数だけ作成が必要です。
職種別の人員に関する情報も報告事項です。職種別の給与(給料・賞与)の情報は任意記載項目とされていますが、医療従事者の処遇改善という制度趣旨から、国は記載への協力を求めています。
様式の勘定科目は病院会計準則をもとに設計されています。一般的な税務会計の科目体系で記帳しているクリニックでは、決算書の数字をそのまま転記できず、科目の組替え(マッピング)作業が発生します。ここが実務上いちばんのつまずきポイントです。
経営情報等の未報告そのものに対する罰則は、現時点では規定されていません。しかしこれは医療法に基づく法律上の義務であり、未報告の状態が続けば、都道府県による督促や、医療法に基づく報告徴収・指導監督の対象になり得ます。
あわせて提出する従来の事業報告書等の届出は、怠ると過料の対象になり得る義務です。経営情報報告と決算届はセットで管理し、「片方だけ出して片方を忘れる」事態を避ける必要があります。
提出状況は都道府県に把握されるため、未提出のままでは定款変更認可・役員変更などの行政手続の場面で指導を受ける、金融機関や福祉医療機構の融資審査・承継(M&A)のデューデリジェンスで管理体制を疑われる、といった実務上の不利益につながります。「期限内に、毎年、淡々と出す」体制づくりが最善のリスク対策です。
湯沢会計事務所は医業経営支援30年超。医療法人の決算・税務申告に加え、事業報告書等の都道府県への届出、経営情報等の報告(G-MIS対応)、登記スケジュールの管理までを年間サポートとして一体でお引き受けしています。「顧問税理士が対応してくれない」「初回の報告が不安」という先生は、お気軽にご相談ください。
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