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医療法人化の総合判断 > 医療法人の経営情報報告義務
医療法人の院長・事務長の方へ 最終更新:2026年6月

医療法人の経営情報報告義務とは?
提出期限・提出内容・未提出リスクを解説

医療法人には、従来の事業報告書等(いわゆる決算届)に加えて、病院・診療所ごとの経営情報を毎年都道府県に報告する義務が課されています。「うちは対象なのか」「何を・いつまでに・どうやって出すのか」「出さないとどうなるのか」── 医業専門30年超の湯沢会計事務所が、診療所規模の医療法人の目線で解説します。

提出期限
決算後 3ヶ月以内
外部監査対象の法人は4ヶ月以内
対象
原則 すべての医療法人
一人医師医療法人も対象
提出方法
G-MIS 等で電子報告
書面(郵送)による提出も可能

先に結論 ── このページの要点

  • 医療法人は、毎会計年度終了後原則3ヶ月以内(公認会計士等の外部監査を受ける法人は4ヶ月以内)に、病院・診療所ごとの経営情報を都道府県知事に報告する義務があります。
  • 従来の事業報告書等の届出(決算届)に代わるものではなく、追加の義務です。毎年2系統の提出が必要です。
  • 対象は原則すべての医療法人。いわゆる四段階税制(概算経費の特例)適用法人は報告対象外ですが、その場合も「対象外である旨」の様式提出が必要です。
  • 未報告そのものへの罰則は現時点で規定されていませんが、法律上の義務であり、放置すれば都道府県の監督・指導の対象になり得ます。
制度の概要

いつから・なぜ始まった制度か

この制度は医療法等の改正により創設され、令和5年(2023年)8月以降に終了する会計年度から適用されています。報告された情報は、国が整備する医療法人経営情報データベース(MCDB)に蓄積され、医療従事者の処遇改善や医療政策の企画・立案などに活用されます。

重要なのは、これが従来の事業報告書等の届出と並ぶ「もうひとつの提出義務」だという点です。決算届を出しているから大丈夫、ではありません。毎年度、①事業報告書等の届出、②経営情報等の報告、の2つを期限内に提出する必要があります。

対象・期限

対象となる法人と提出期限

項目内容
対象法人原則すべての医療法人(一人医師医療法人・診療所のみの法人を含む)
対象外となる法人社会保険診療報酬の所得計算の特例(いわゆる四段階税制)の適用を受ける小規模法人。ただし「報告対象外医療法人」である旨を所定の様式で報告する必要があり、何も出さなくてよいわけではありません
提出期限毎会計年度終了後原則3ヶ月以内(例:3月決算なら6月末まで)。公認会計士・監査法人の監査を受けなければならない大規模法人は4ヶ月以内
提出先主たる事務所の所在地の都道府県知事
提出方法G-MIS(医療機関等情報支援システム)で様式をダウンロードし、入力のうえアップロードする方法が原則。WAM NET経由の報告や、事業報告書等の届出と併せた書面(郵送)提出も認められています
新規設立法人の方へ:G-MISでの報告には報告用の医療法人IDが必要で、IDの発行は都道府県への依頼が必要です。初回の決算期直前にあわてないよう、ID取得は決算の数ヶ月前までに済ませておくことをおすすめします。
提出内容

何を報告するのか ── 診療所用様式の中身

施設ごとの収益・費用の内訳

報告様式は病院用(様式1)・診療所用(様式2)・報告対象外医療法人用(様式3)に分かれています。診療所用様式では、医業収益(入院・外来等の別)や、給与費・材料費・委託費・減価償却費といった費用の内訳を、施設(診療所)ごとに記載します。複数の診療所を持つ法人は施設の数だけ作成が必要です。

職員数・給与に関する情報

職種別の人員に関する情報も報告事項です。職種別の給与(給料・賞与)の情報は任意記載項目とされていますが、医療従事者の処遇改善という制度趣旨から、国は記載への協力を求めています。

会計帳簿との「翻訳」が必要

様式の勘定科目は病院会計準則をもとに設計されています。一般的な税務会計の科目体系で記帳しているクリニックでは、決算書の数字をそのまま転記できず、科目の組替え(マッピング)作業が発生します。ここが実務上いちばんのつまずきポイントです。

未提出リスク

出さないとどうなるか

「罰則がない」=「出さなくてよい」ではない

経営情報等の未報告そのものに対する罰則は、現時点では規定されていません。しかしこれは医療法に基づく法律上の義務であり、未報告の状態が続けば、都道府県による督促や、医療法に基づく報告徴収・指導監督の対象になり得ます。

事業報告書等(決算届)の未届は過料の対象

あわせて提出する従来の事業報告書等の届出は、怠ると過料の対象になり得る義務です。経営情報報告と決算届はセットで管理し、「片方だけ出して片方を忘れる」事態を避ける必要があります。

実務上の不利益

提出状況は都道府県に把握されるため、未提出のままでは定款変更認可・役員変更などの行政手続の場面で指導を受ける、金融機関や福祉医療機構の融資審査・承継(M&A)のデューデリジェンスで管理体制を疑われる、といった実務上の不利益につながります。「期限内に、毎年、淡々と出す」体制づくりが最善のリスク対策です。

よくあるご質問

院長先生からよくいただく質問

顧問税理士に頼めば対応してもらえますか?
事務所によります。この報告は税務申告とは別の医療法上の手続で、病院会計準則ベースの科目組替えやG-MISの操作が必要なため、医業に慣れていない会計事務所では対応外とされることもあります。当事務所では、決算・税務申告と一体で経営情報報告・事業報告書等の届出までをお引き受けしています。現在の顧問の先生が対応されない場合のスポット対応もご相談ください。
個人開業のクリニックにも報告義務はありますか?
ありません。この制度の対象は医療法人です。個人開業のままであれば経営情報報告も事業報告書等の届出も不要であり、この事務負担の差は法人化を判断する際の考慮要素のひとつです(詳しくは「医療法人化の判断要素04」のページをご覧ください)。
報告した経営情報は公表されてしまうのですか?
報告された情報はデータベースで分析され、属性ごとに集計・加工された形で活用されることが想定されています。一方、従来の事業報告書等は都道府県で閲覧請求の対象になっており、法人の決算概要はもともと第三者が閲覧し得るものです。「見られても恥ずかしくない決算書」を作ることが、結局いちばんの対策です。
決算期がきてからの準備で間に合いますか?
初回はおすすめしません。G-MISのID取得、科目組替えの設計、施設別の数字の切り分け(複数施設の場合)など、初回だけは準備に時間がかかります。決算の2〜3ヶ月前から段取りしておけば、2年目以降はルーティン化できます。

経営情報報告、決算と一緒に「丸ごと」お任せください

湯沢会計事務所は医業経営支援30年超。医療法人の決算・税務申告に加え、事業報告書等の都道府県への届出、経営情報等の報告(G-MIS対応)、登記スケジュールの管理までを年間サポートとして一体でお引き受けしています。「顧問税理士が対応してくれない」「初回の報告が不安」という先生は、お気軽にご相談ください。

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