法人化の税効果は確かに存在します。しかしそれは「自動的に税金が減る」のではなく、所得の分散と繰延べの仕組みを正しく設計して初めて生まれるものです。効果とコストの両面を解説します。
個人であれば、課税所得1,800万円超の所得に対して所得税+住民税で50%、課税所得4,000万円超では55%の税率で課税されます。一方、医療法人の場合には、法人に対する税率は課税所得800万円以下の部分に約17.6%、800万円超の部分に約27.2%と、個人の場合と比較して税率が低くなっています。従いまして、法人化はいかに法人に利益を出して低い税率を適用するかが鍵になります。
個人開業では診療所の利益すべてが院長個人の所得となり、超過累進税率(所得税・住民税あわせて最高55%水準)で課税されます。法人化すると、利益を「法人の所得」と「役員報酬」に分けることができ、さらに経営に従事するご家族への報酬で世帯内の分散も可能になります。中小法人の法人税率は年800万円以下の所得に対して軽減税率が適用され、個人の高い限界税率との差が税効果の源泉です。
院長が法人から受け取る役員報酬は給与所得となり、給与所得控除という概算経費が認められます。個人事業では存在しなかった控除が世帯全体で新たに生まれます。
1. 全額が経費になる保険に加入することにより、実質的に少ない負担で大きな保障を得ることができます。
2. 貯蓄性のある生命保険に加入することにより、保険料を経費にしながら、簿外で将来の支出(退職金を含む)に備えた資産形成が可能です。
法人は院長やご家族に退職金を支払うことができ、法人側では損金、受け取る側では退職所得控除と2分の1課税という大きな優遇があります。毎年の節税よりも、退職金まで含めた生涯トータルの税負担で考えることが本質です。
欠損金の繰越期間が個人(3年)より長い10年であること、生命保険の活用余地が広がることなども法人のメリットです。
個人開業医には、社会保険診療報酬が一定額以下の場合に実際の経費より有利な概算経費率で所得計算できる特例(いわゆる措置法26条)があります。この特例の恩恵が大きい規模のクリニックでは、法人化でかえって税負担が増えることがあります。
個人時代に積み立ててきた小規模企業共済は、法人成りに伴い取扱いの検討が必要です。また法人には交際費の損金算入限度があり、「法人にすれば何でも経費になる」は誤解です。
法人化により厚生年金が強制適用となり、役員報酬と給与に対する社会保険料の事業主負担が発生します。税金の減少と社会保険料の増加は必ずセットで試算しなければ、手取りベースでは逆転することもあります(詳しくは判断要素03へ)。
このテーマは医療法人化を判断する7つの要素のひとつです。先生の実際の数字に当てはめたシミュレーションは、医業経営支援30年超の湯沢会計事務所が無料でお手伝いします。
無料相談を申し込む