医療法人化の7つの判断要素 > 判断要素03 社会保険の負担
医療法人化の判断要素 03/07

社会保険の負担 ──
法人化で必ず増える固定費を直視する

医療法人になると、厚生年金は人数にかかわらず強制適用になります。税金の試算だけで法人化を決めると、この負担増で手取りが想定を下回ります。一方で、設立時の手続次第で医師国保を継続できる重要な例外もあります。

原則

法人化すると社会保険はどう変わるか

厚生年金は強制適用

個人診療所は常勤従業員5人未満であれば社会保険の適用は任意ですが、法人は人数にかかわらず強制適用です。院長・家族役員を含む常勤者の報酬・給与に対して厚生年金保険料(労使合計18.3%、半分が法人負担)がかかります。スタッフ10名規模のクリニックなら、法人負担だけで年間数百万円単位の固定費増になることも珍しくありません。

健康保険は「医師国保の継続」という選択肢

健康保険(協会けんぽ等)も原則は強制適用ですが、個人時代から医師国保・歯科医師国保に加入している場合、年金事務所で「健康保険被保険者適用除外承認」を受けることで、法人化後も医師国保を継続できます。医師国保には事業主負担がないため、この承認を取るかどうかで毎年の人件費が大きく変わります。

ここが実務の急所:適用除外承認の申請には期限があり、法人設立・適用のタイミングと連動します。手続が漏れると協会けんぽへの加入となり、原則として後から医師国保には戻れません。法人化スケジュールの中に社会保険手続を最初から組み込んでおく必要があります(手続は提携社会保険労務士と連携して対応します)。
もう一つの見方

負担増は「採用力への投資」でもある

厚生年金の適用は、スタッフから見れば将来の年金が手厚くなる待遇改善です。看護師・医療事務の採用市場では「社会保険完備」が応募の前提条件になりつつあり、人材確保の観点では法人化がプラスに働きます。また院長ご自身も、厚生年金により将来の公的年金が個人事業時代(国民年金のみ)より厚くなります。

つまり社会保険は単純な「コスト」ではなく、採用力・定着率・院長自身の老後保障とのトレードオフとして評価すべき項目です。

当事務所の視点法人化シミュレーションでは、税金の増減だけでなく、社会保険料の法人負担・個人負担の増減を含めた「世帯+法人の実質手取り」で比較します。医師国保を継続できるか否かで結論が変わるケースは少なくありません。
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