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クリニック開業の資金調達をお考えの先生へ 最終更新:2026年6月

クリニック開業融資の通し方
日本政策金融公庫・地方銀行・リース会社の使い分け

クリニックの開業資金は4,000万円台から1億円超。これを一つの金融機関だけでまかなうことはまれで、実務では日本政策金融公庫・地方銀行・リース会社の3つを組み合わせて調達します。3者は審査で見るポイントも、決定までのスピードもまったく違います。それぞれの「融資姿勢」と「決定にかかる時間」を理解し、正しい順番で正しい資料を出すことが、融資を通す最大のコツです。

日本政策金融公庫
無担保無保証 3,000万円まで
審査は速い。実行は賃貸借契約後(協調時は他行決定後)
地方銀行
無担保無保証 2億円程度まで
審査1〜2ヶ月。売上の入金口座指定が条件
リース会社
無担保無保証 1億円程度まで
審査が速い。シャープファイナンス・リコーリース等
全体像

3つの調達先は「役割分担」で考える

3者は競合ではなく、組み合わせて使う「チーム」です。典型的な組み合わせは、運転資金と設備の一部を公庫、内装・設備の大型資金を地方銀行、医療機器や不足分をリース会社(融資・割賦・リース)という分担です。例えば内科(開業資金7,100万円・自己資金1,400万円)なら、「公庫2,500万円+地銀2,700万円+リース会社500万円相当」のような設計になります。

重要なのは、公庫と地方銀行は同時並行で話を進める(協調融資)のが定石だということです。公庫の内諾は銀行への信用材料になり、銀行の参加は公庫の安心材料になります。どちらか一方に断られてから次へ行く「直列」の進め方は、時間を失ううえに「他行に断られた案件」という不利な印象も生みます。

調達先 1

日本政策金融公庫 ── 創業融資の「入口」

日本政策金融公庫(新規開業・スタートアップ支援資金)

政府100%出資の政策金融機関。実績ゼロの創業者に貸すことが使命のため、開業融資の最初の相談先です。無担保・無保証で最大3,000万円まで利用できます。

融資姿勢

創業支援が使命のため、過去の事業実績がなくても前向きに検討されます。審査の中心は「人」と「計画」。具体的には、①自己資金の額とその形成過程(通帳の履歴)、②勤務医としての経験と開業する診療科の整合性、③事業計画の数字の根拠(患者数・単価・損益分岐点・返済原資)の3点です。医師は属性として高く評価されますが、計画の数字を自分の言葉で説明できない申込みは通りません

融資決定にかかる時間

審査は速い書類が揃っていれば短期間で結論が出る、スピードの速い調達先です。ただし実行(着金)には条件があります。①テナントの賃貸借契約を締結した後であること、②協調融資の場合は、他の金融機関の融資決定後に実行されること、の2点です。「審査が早い=最初にお金が入る」ではない点を、資金繰り計画に必ず織り込んでください。

通し方のポイント
  • 創業計画書は「数字の根拠」で勝負:診療圏調査に基づく1日患者数、診療科の平均単価、損益分岐点、月次の返済原資までを一本の線でつなげます。
  • 自己資金の履歴を整える:申込みの半年以上前から専用口座で積み立て、出所を説明できる状態にしておきます(詳しくは自己資金のページへ)。
  • 面談は「想定問答」を準備:なぜこの場所か、患者が来なかったらどうするか、配偶者は賛成か── 定番の質問に、下振れシナリオまで含めて答えられるように準備します。
調達先 2

地方銀行 ── 大型資金と長い付き合いの「主役」

地方銀行(信用金庫を含む地域金融機関)

開業資金の最大部分を担う調達先。医師向けには無担保・無保証で2億円程度まで対応する医療専門融資を持つ銀行もあり、開業後は10年単位の付き合いになるメインバンク候補です。

融資姿勢

3者の中で融資額の大きさが最大の強みです。医師・歯科医師の開業案件には積極的で、無担保・無保証の大型融資にも対応しますが、その代わりの条件として、社保・国保(診療報酬)およびクレジット売上の入金先口座を当行に指定することが求められるのが通例です。入金口座を押さえることが銀行にとっての実質的な保全になっているわけです。審査では事業計画に加えて、診療圏の将来性(地元銀行ならではの土地勘)、自己資金比率、メイン取引の期待値が見られます。公庫との協調融資には総じて前向きです。

融資決定にかかる時間

約1〜2ヶ月支店の担当者→支店長→本部稟議という多段階の決裁を経るため、審査に時間がかかります。融資額が大きいほど慎重になり、信用保証協会付きの場合は協会の審査も並行して走ります。内装工事の契約時期から逆算し、最も早く動き始めるべき調達先です。

通し方のポイント
  • 「紹介」から入る:飛び込みより、会計事務所・医師会・取引先からの紹介で医療案件に慣れた担当者につながる方が、話が早く正確に進みます。
  • 診療圏調査を添えて地元目線に応える:地方銀行はそのエリアの人口動態と競合を知っています。客観的な診療圏調査データは、銀行内の稟議を通す強力な材料になります。
  • メイン取引の意思を示す:売上入金口座・給与振込・将来の法人化まで含めた長い取引の絵を見せることが、金利・保証条件の交渉材料になります。
  • 公庫との協調を最初から提示:「公庫に○千万円、御行に○千万円」という分担案を持ち込むと、銀行側もリスクを取りやすくなります。
調達先 3

リース会社 ── 融資・割賦・リースの「3つの手段」を持つ

リース会社(融資+割賦+リース)

リース会社の調達手段は機器のリースだけではありません。融資(現金の貸付)・割賦(分割購入)・リース(賃借)の3つを案件に応じて組み合わせられるのが強みで、無担保・無保証で最大1億円程度まで対応します。クリニック向けの主な取引先はシャープファイナンス、リコーリースなどです。

融資姿勢(審査姿勢)

医師・歯科医師の開業案件には総じて積極的で、無担保・無保証で1億円程度までと、銀行に次ぐ規模の調達が可能です。審査は申込人の属性(勤務歴・年収・信用情報)と資金使途・物件の妥当性が中心で、事業計画の精査は金融機関ほど深くありません。その分、金利・料率の水準は公庫や銀行より高めで、リース・割賦は原則として中途解約ができない点が裏側のコストです。

融資決定にかかる時間

審査は速い(数日〜2週間)3者の中で最もスピーディーで、見積書と申込書類が揃えば最短で数日、通常でも1〜2週間で審査結果が出ます。銀行融資の決定を待たずに機器の発注スケジュールを確定でき、銀行・公庫の枠で足りない部分を素早く埋める「調整弁」としても機能します。

通し方のポイント
  • 融資・割賦・リースを使い分ける:「融資」は現金の貸付で内装費等にも充当可能、「割賦」は分割購入で完済後は自院の資産(減価償却)、「リース」は賃借で月額を費用処理。資金使途と税務・会計の扱いから最適な手段を選びます。
  • 銀行・公庫との役割分担で考える:低利の銀行・公庫の枠を内装・運転資金に優先的に使い、機器や不足分をリース会社で調達するのが総コストを抑える基本形です。
  • 総支払額で比較する:月額の手軽さに流されず、支払総額・再リース条件・満了時の扱い(返却/買取)まで含めて、借入購入と必ず比較します。
  • 固定費の積み上がりに注意:リース料・割賦金は毎月の固定費です。借入返済+リース料+割賦金の合計で資金繰りを管理します。
  • 複数社の見積りを取る:同じ機器でも料率は会社により差があります。ディーラー提携の1社で即決しないことです。
比較一覧

3つの調達先 早見表

項目日本政策金融公庫地方銀行リース会社
主な役割創業融資の入口。運転資金・設備の一部内装・設備の大型資金。メインバンク候補融資・割賦・リースの3手段。機器調達と不足分の調整役
無担保・無保証の枠最大3,000万円2億円程度まで(医療専門融資)最大1億円程度
融資姿勢創業に積極的。計画と自己資金の履歴を重視融資額の大きさが強み。診療圏・メイン取引を重視柔軟・積極的。属性と資金使途中心の審査(シャープファイナンス・リコーリース等)
決定までの時間速い約1〜2ヶ月(時間がかかる)速い(数日〜2週間)
主な条件・注意点実行は賃貸借契約の締結後。協調融資の場合は他の金融機関の融資決定後に実行社保・国保・クレジット売上の入金先口座を当行に指定することが条件金利・料率は高め。リース・割賦は中途解約不可
金利・コスト水準低め(固定・長期)低め〜中(条件交渉の余地)高め
動き出す順番銀行と同時並行(協調融資)最も早く着手(決裁に時間がかかるため)機器選定・不足額が固まり次第
スケジュールの注意:内装工事の契約・着工は融資の決定が前提です。地方銀行の決裁に2ヶ月かかることを見込まず工事契約を先行させると、資金が間に合わず違約のリスクが生じます。開業予定日から逆算して、融資の申込みは6ヶ月以上前に動き始めてください。
あわせて読む:融資審査の土台になる自己資金の考え方は「クリニック開業の自己資金はいくら必要か」、調達額そのものを決める開業計画は「診療科目別 開業損益モデル」をご覧ください。
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融資に必要な書類一覧 ── 事業計画書作成と金融機関提出用

公庫・地方銀行・リース会社のいずれに申し込む場合も、求められる書類はおおむね共通です。当事務所が実際の融資支援で使用しているチェックリスト(全21項目)を公開します。すべて揃えてから申し込むことが、審査スピードと通過率を大きく左右します。

  1. 前3年分の確定申告書(源泉徴収票)
  2. 医師免許証・歯科医師免許証のコピー
  3. 内装代(建築費)の見積書
  4. 医療機器の見積書
  5. 賃貸借契約書のコピー(土地の場合は売買契約書)
  6. 履歴書(学歴、職歴、専門医等の資格、所属学会を記載)
  7. 開業の理念と戦略(簡潔に4つくらいにまとめる)
  8. 診療圏調査データ
  9. 住宅ローン等の現在の負債がわかるもの
  10. 所有不動産(担保予定の物件)の登記簿謄本
  11. 運転免許証またはマイナンバーカードのコピー(表裏)
  12. 自己資金が確認できる書類(通帳コピー等)
  13. 診療日・休診日(予定)
  14. スタッフの職種と人数(予定)
  15. 3年目の売上目標
  16. 毎月必要な生活費
  17. 開業予定年月日
  18. クリニック名称(予定)
  19. 融資希望金額
  20. 日本政策金融公庫の申込書(公庫に申し込む場合)
  21. 家系図(両親、兄弟、配偶者、祖父母くらいまでの住所・氏名・年齢・職業)
当事務所の視点:意外に思われるのが21番の家系図ですが、開業医の融資では家族の支援体制や承継の見通しまで含めて評価されるため、求められることがあります。また7番の「開業の理念と戦略」と15番の「3年目の売上目標」は、面談で必ず自分の言葉で説明を求められる項目です。書類は単に集めるのではなく、一つひとつが事業計画書と矛盾なくつながっていることが審査通過の条件です。当事務所では書類の収集・作成から金融機関への提出まで一括でサポートしています。

融資は「準備の質」で決まります。一緒に通しにいきましょう

湯沢会計事務所は医業経営支援30年超。金融機関が納得する事業計画書・資金繰り表の作成、公庫と地方銀行の協調融資の組み立て、面談への同席・想定問答の準備、リースと購入の損得比較まで、資金調達の全工程を伴走支援します。地域の金融機関との日常的な接点を持つ会計事務所だからこそできる「通る申込み」のかたちがあります。初回相談は無料です。

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