クリニックの開業資金は4,000万円台から1億円超。これを一つの金融機関だけでまかなうことはまれで、実務では日本政策金融公庫・地方銀行・リース会社の3つを組み合わせて調達します。3者は審査で見るポイントも、決定までのスピードもまったく違います。それぞれの「融資姿勢」と「決定にかかる時間」を理解し、正しい順番で正しい資料を出すことが、融資を通す最大のコツです。
3者は競合ではなく、組み合わせて使う「チーム」です。典型的な組み合わせは、運転資金と設備の一部を公庫、内装・設備の大型資金を地方銀行、医療機器や不足分をリース会社(融資・割賦・リース)という分担です。例えば内科(開業資金7,100万円・自己資金1,400万円)なら、「公庫2,500万円+地銀2,700万円+リース会社500万円相当」のような設計になります。
重要なのは、公庫と地方銀行は同時並行で話を進める(協調融資)のが定石だということです。公庫の内諾は銀行への信用材料になり、銀行の参加は公庫の安心材料になります。どちらか一方に断られてから次へ行く「直列」の進め方は、時間を失ううえに「他行に断られた案件」という不利な印象も生みます。
政府100%出資の政策金融機関。実績ゼロの創業者に貸すことが使命のため、開業融資の最初の相談先です。無担保・無保証で最大3,000万円まで利用できます。
創業支援が使命のため、過去の事業実績がなくても前向きに検討されます。審査の中心は「人」と「計画」。具体的には、①自己資金の額とその形成過程(通帳の履歴)、②勤務医としての経験と開業する診療科の整合性、③事業計画の数字の根拠(患者数・単価・損益分岐点・返済原資)の3点です。医師は属性として高く評価されますが、計画の数字を自分の言葉で説明できない申込みは通りません。
審査は速い書類が揃っていれば短期間で結論が出る、スピードの速い調達先です。ただし実行(着金)には条件があります。①テナントの賃貸借契約を締結した後であること、②協調融資の場合は、他の金融機関の融資決定後に実行されること、の2点です。「審査が早い=最初にお金が入る」ではない点を、資金繰り計画に必ず織り込んでください。
開業資金の最大部分を担う調達先。医師向けには無担保・無保証で2億円程度まで対応する医療専門融資を持つ銀行もあり、開業後は10年単位の付き合いになるメインバンク候補です。
3者の中で融資額の大きさが最大の強みです。医師・歯科医師の開業案件には積極的で、無担保・無保証の大型融資にも対応しますが、その代わりの条件として、社保・国保(診療報酬)およびクレジット売上の入金先口座を当行に指定することが求められるのが通例です。入金口座を押さえることが銀行にとっての実質的な保全になっているわけです。審査では事業計画に加えて、診療圏の将来性(地元銀行ならではの土地勘)、自己資金比率、メイン取引の期待値が見られます。公庫との協調融資には総じて前向きです。
約1〜2ヶ月支店の担当者→支店長→本部稟議という多段階の決裁を経るため、審査に時間がかかります。融資額が大きいほど慎重になり、信用保証協会付きの場合は協会の審査も並行して走ります。内装工事の契約時期から逆算し、最も早く動き始めるべき調達先です。
リース会社の調達手段は機器のリースだけではありません。融資(現金の貸付)・割賦(分割購入)・リース(賃借)の3つを案件に応じて組み合わせられるのが強みで、無担保・無保証で最大1億円程度まで対応します。クリニック向けの主な取引先はシャープファイナンス、リコーリースなどです。
医師・歯科医師の開業案件には総じて積極的で、無担保・無保証で1億円程度までと、銀行に次ぐ規模の調達が可能です。審査は申込人の属性(勤務歴・年収・信用情報)と資金使途・物件の妥当性が中心で、事業計画の精査は金融機関ほど深くありません。その分、金利・料率の水準は公庫や銀行より高めで、リース・割賦は原則として中途解約ができない点が裏側のコストです。
審査は速い(数日〜2週間)3者の中で最もスピーディーで、見積書と申込書類が揃えば最短で数日、通常でも1〜2週間で審査結果が出ます。銀行融資の決定を待たずに機器の発注スケジュールを確定でき、銀行・公庫の枠で足りない部分を素早く埋める「調整弁」としても機能します。
| 項目 | 日本政策金融公庫 | 地方銀行 | リース会社 |
|---|---|---|---|
| 主な役割 | 創業融資の入口。運転資金・設備の一部 | 内装・設備の大型資金。メインバンク候補 | 融資・割賦・リースの3手段。機器調達と不足分の調整役 |
| 無担保・無保証の枠 | 最大3,000万円 | 2億円程度まで(医療専門融資) | 最大1億円程度 |
| 融資姿勢 | 創業に積極的。計画と自己資金の履歴を重視 | 融資額の大きさが強み。診療圏・メイン取引を重視 | 柔軟・積極的。属性と資金使途中心の審査(シャープファイナンス・リコーリース等) |
| 決定までの時間 | 速い | 約1〜2ヶ月(時間がかかる) | 速い(数日〜2週間) |
| 主な条件・注意点 | 実行は賃貸借契約の締結後。協調融資の場合は他の金融機関の融資決定後に実行 | 社保・国保・クレジット売上の入金先口座を当行に指定することが条件 | 金利・料率は高め。リース・割賦は中途解約不可 |
| 金利・コスト水準 | 低め(固定・長期) | 低め〜中(条件交渉の余地) | 高め |
| 動き出す順番 | 銀行と同時並行(協調融資) | 最も早く着手(決裁に時間がかかるため) | 機器選定・不足額が固まり次第 |
公庫・地方銀行・リース会社のいずれに申し込む場合も、求められる書類はおおむね共通です。当事務所が実際の融資支援で使用しているチェックリスト(全21項目)を公開します。すべて揃えてから申し込むことが、審査スピードと通過率を大きく左右します。
湯沢会計事務所は医業経営支援30年超。金融機関が納得する事業計画書・資金繰り表の作成、公庫と地方銀行の協調融資の組み立て、面談への同席・想定問答の準備、リースと購入の損得比較まで、資金調達の全工程を伴走支援します。地域の金融機関との日常的な接点を持つ会計事務所だからこそできる「通る申込み」のかたちがあります。初回相談は無料です。
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