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医院の将来を考え始めた院長先生へ 最終更新:2026年6月

院長の相続・退職金・事業承継対策
── 医院・法人・財産を「誰が継ぐか」

クリニックの事業承継は、一般の会社の承継より複雑です。なぜなら、引き継ぐべきものが「医院(診療を続ける主体)」「法人(経営権)」「財産(資産)」の3つに分かれ、しかもそれぞれ承継できる人が違うからです。医院は医師にしか継げない、法人の経営権は誰に渡すか、財産は相続人みんなで分ける── この3つを切り分けて考えないと、承継は必ずどこかで行き詰まります。このページでは、3つの承継の整理と、その備えとしての退職金の活用を、医業経営支援30年超の湯沢会計事務所が解説します。

考えるべき3つの承継
医院・法人・財産
それぞれ承継できる人が異なる
リタイアを決めるポイント
健康意欲
開業医に定年はない。引退は自分で設計する
役員退職金の目安式
月額×年数×功績倍率
引退資金の確保+相続財産の圧縮
全体像

クリニックの承継は「3つ」に分けて考える

「跡継ぎ問題」とひとくくりにせず、誰が何を継ぐのかを3つに分解することが、すべての出発点です。

承継 1

医院を継ぐ人

診療を続ける後継の医師(管理者)。これは医師にしか継げません。子・親族・第三者(M&A)・勤務医のいずれかになります。

承継 2

法人を継ぐ人

医療法人・一般社団法人の経営権(理事長・代表理事)を継ぐ人。法人格や非営利性のルールにより、継げる人が変わります。

承継 3

財産を継ぐ人

自宅・預貯金・有価証券などの個人財産を継ぐ相続人。配偶者やお子さま全員が対象で、遺産分割と相続税の問題になります。

難しいのは、この3つが必ずしも同じ人にならないことです。例えば、医師である長男が医院と法人を継ぐ一方、医師でない次男・長女にも財産を分けなければなりません。医院・法人を継ぐ長男に資産が集中すると他の子の取り分が減り、逆に財産を平等に分けると医院の事業基盤が崩れる── この「事業を継ぐ子」と「継がない子」の間の不公平こそ、医院承継の最大の難所です。3つを切り分けて、それぞれに最適な人と方法を当てはめていくのが、承継対策の本質です。

承継 1

誰が医院を継承するのか ── 診療を続ける人

医院(診療所)の管理者は医師でなければなりません。したがって医院そのものを継げるのは医師だけです。選択肢は4つです。

  • 子が医師で継ぐ(親子承継):最も自然な形ですが、お子さまが医師になるか、診療科が合うか、継ぐ意思があるかは別問題です。本人の人生の選択であり、強制はできません。早い段階での率直な対話が欠かせません。
  • 親族の医師が継ぐ:子以外の親族(甥・姪など)に医師がいれば候補になります。
  • 勤務医・第三者が継ぐ(M&A・承継開業):後継者が身内にいない場合、勤務医に継いでもらう、あるいは第三者へ事業譲渡(M&A)する道があります。長年の患者と地域医療を残せるうえ、院長は承継の対価を引退後の資金にできます。近年もっとも増えている形です。
  • 継がずに閉院する:後継者が見つからない場合の最終手段。ただし、設備の処分・スタッフの雇用・患者の引き継ぎなど、閉院にも準備とコストがかかります。

重要なのは、「子が継いでくれるはず」という思い込みで対策を先送りしないことです。お子さまの意思を早めに確認し、継がない場合はM&Aを含めた別ルートを早期に検討します。後継者の有無が、法人・財産の承継方針すべてを左右します。

承継開業・M&Aのご相談も承ります:後継者がいない医院の第三者承継や、勤務医の先生が承継というかたちで開業するケースのご相談もお受けしています。新規開業より初期投資を抑えられる利点があります(自己資金のページでも触れています)。
承継 2

誰が法人を継承するのか ── 経営権を引き継ぐ人

法人の経営権(理事長・代表理事の座と、法人の支配権)を誰に渡すかは、法人格によってルールが大きく異なります

法人格経営権を継げる人承継のポイント
医療法人理事長は原則医師・歯科医師後継者は医師に限られる。2007年以降設立の法人は「持分なし」のため出資持分の相続問題はないが、それ以前の「持分あり」法人は出資持分の評価額が高額になり相続税の大問題になる(後述の認定医療法人制度で対応)
一般社団法人誰でも可(医師要件なし)承継者を選びやすく、目的を変えれば医療以外への転換も可能。非営利型なら法人に残った財産は相続税の対象外。理事の親族1/3以下要件の中で支配権を維持する設計が必要
個人開業法人格がない「法人の承継」という概念がなく、後継医師が新たに自分の診療所として開設し直す(個人→個人の承継)

医院を継ぐ医師(承継1)と法人の経営権を継ぐ人(承継2)は、医療法人なら通常は同じ医師になります。一方、一般社団法人は経営権を医師でない家族に持たせることもでき、設計の自由度が高いのが特徴です。どの法人格を選ぶかは、承継の出口を見据えて開業・法人化の段階で決めておくのが理想です。

「持分あり」医療法人の先生へ:認定医療法人制度

2007年3月以前に設立された「持分あり」の医療法人は、利益の蓄積とともに出資持分の評価額が膨らみ、相続時に多額の相続税がかかる重大な問題を抱えています。これを解消する制度が「持分なし医療法人」への移行を支援する認定医療法人制度で、認定を受けて移行すれば出資持分にかかる税負担の問題を解消できます。この認定制度の期限は2029年(令和11年)12月31日までとされており、移行には数年の計画が必要です。持分あり法人の先生は、早めの検討をおすすめします。

承継 3

誰が財産を継承するのか ── 相続人への分配

個人の財産(自宅・預貯金・有価証券・生命保険など)は、配偶者やお子さま全員が相続人となり、遺産分割と相続税の対象になります。ここで医院承継特有の難問が生じます。

「継ぐ子」と「継がない子」の不公平をどう埋めるか

医師である長男が医院・法人を継ぎ、医師でない次男・長女がいる場合を考えます。医院の土地建物や法人の支配権を長男に集めると、他の子の取り分が極端に減ります。かといって財産を平等に3分割すると、医院の不動産が共有になって事業が回らなくなったり、長男が他の子に多額の代償金を払えずに行き詰まったりします。この調整こそが、医院相続の核心です。対策には次のような手段があります。

  • 遺言書の作成:誰に何を相続させるかを明確にし、争いを未然に防ぎます。事業用資産は後継者に、それ以外を他の子に、という設計の土台になります。
  • 生命保険の活用:後継者を受取人にした保険で、他の子に渡す代償分割の資金を準備します。保険金には相続税の非課税枠もあります。
  • 遺留分への配慮:継がない子にも法律上の最低取り分(遺留分)があります。これを無視した偏った分割は、後の紛争の火種です。
  • 生前贈与の活用:暦年贈与・相続時精算課税などを使い、計画的に財産を移転して相続財産を圧縮します。

医院の不動産・自社株(出資持分)の評価に注意

クリニックの土地建物や、持分あり医療法人の出資持分は、評価額が大きくなりやすく、相続税を押し上げます。事業用宅地には小規模宅地等の特例で評価を下げられる場合があり、適用要件の確認が重要です。「現金は少ないのに、事業用資産で相続税だけが高額になり、納税資金が足りない」という事態を避けるための事前対策が欠かせません。

最も多い失敗:承継対策をしないまま院長が急逝するケースです。遺言も納税資金の準備もないまま相続が発生すると、医院の不動産や持分の評価で相続税が膨らむ一方、納税のための現金がなく、最悪の場合は事業用資産を売って納税する事態に陥ります。残された家族とスタッフ、患者を守るためにも、元気なうちの準備が何よりの対策です。
退職金(法人)

院長の退職金 ── リタイアと退職金の実務Q&A

医療法人(または一般社団法人)の院長は役員退職金を受け取れます。退職金は引退後の生活と相続・承継対策の要です。先生方からよくいただく質問にお答えします。

Q. 院長はいつリタイアするのか

クリニックの院長には定年がありません。自分で開設・経営している以上、いつ辞めるかを自分で決められるのが勤務医との最大の違いです。だからこそ「区切り」が作りにくく、ずるずると続けてしまいがちです。リタイアの時期は、後継者の有無、退職金や老後資金の準備状況、そして次に述べる健康と意欲から逆算して、能動的に設計するものです。

Q. 院長のリタイアの平均年齢は

開業医のリタイア(引退・閉院・承継)の年齢は、一般のサラリーマンの定年よりかなり遅く、おおむね60代後半から70代に広く分布します。70歳を超えて現役を続ける院長も珍しくありません。後継者がいて承継できる医院は60代で経営を譲り、後継者がいない医院は体力の続く限り診療を続けて70代で閉院する、という二極化の傾向があります。

Q. リタイアのポイントは ── ズバリ「健康状態」と「仕事への意欲」

リタイア時期を決める最大のポイントは、年齢でも売上でもなく、院長ご自身の「健康状態」と「仕事に対する意欲」です。診療は体力・気力・判断力を要する仕事であり、これらが落ちてくると、診療の質にも経営にも影響します。健康なうちは続け、衰えを感じたら退く── 当たり前のようでいて、これがいちばん難しい判断です。だからこそ、「健康と意欲がいつ尽きてもいいように、承継と退職金の準備だけは元気なうちに済ませておく」のが賢明です。準備さえできていれば、辞めどきを健康と意欲という本質的な基準で、心置きなく判断できます。

Q. 退職金はいくら取れるのか

役員退職金の一般的な算定式は「最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率」です。例えば最終報酬月額150万円・在任年数20年・功績倍率3.0なら、150万円 × 20 × 3.0 = 9,000万円が一つの目安になります。功績倍率は役職や貢献度に応じて設定し、医院の場合は2〜3倍程度が一般的な水準です。ただしこれは上限の目安であり、不相当に高額な部分は損金(法人の経費)として認められないため、職務内容・同規模法人の水準に照らして妥当な範囲に収めることと、金額の根拠を残し、社員総会・理事会の決議など正式な手続きを踏むことが重要です。退職金は退職所得控除を引いた後、その2分の1だけが課税対象という優遇された課税で受け取れるため、同じ額を役員報酬で取るより手取りが大きく残ります。

Q. 退職金はどうやって用意すればいいのか

数千万円規模の退職金を引退時にいきなり用意するのは、資金繰り上の大きな負担です。そこで在職中から計画的に原資を積み立てておくのが定石です。代表的な方法は次のとおりです。

  • 法人契約の生命保険:院長を被保険者とする法人保険で退職金原資を準備します。在職中の保障を兼ねられ、解約返戻金を退職金の支払原資に充てられます。
  • 小規模企業共済:一定の役員等が対象。掛金が所得控除になり、受取時は退職所得・公的年金等の扱いで優遇されます。
  • 計画的な内部留保:退職金の支払いに備えて法人に資金を残しておきます。

「いつ・いくらの退職金を・どの方法で用意するか」を引退時期から逆算し、早い段階から仕込むことが何より大切です。

Q. 退職金を取ったら、もう仕事はできないのか

退職金は「役員を退職した」事実に対して支払われるものなので、受け取った後も従来どおりフルタイムで経営し続けることはできません。ただし、辞めて一切働けなくなるわけではありません。実務では、理事長を退任して後継者に経営権を譲り、ご自身は一(ひら)の理事や非常勤の医師として、勤務日数・報酬・権限を大きく減らして関与を続ける形がよく使われます。これを分掌変更による退職金といい、(1)役員報酬がおおむね半額以下になる、(2)経営上の主要な地位から退く、といった実質的な地位の激変を伴えば、完全に辞めなくても退職金を支給できる場合があります。「いきなり全部やめるのは不安」という先生でも、第一線を退きつつ退職金を受け取り、無理のない範囲で診療を手伝う、という現実的な引き方が可能です。

Q. 退職金を取らないまま死亡した場合はどうなるのか

退職金を受け取る前に院長が在職中に亡くなった場合は、「死亡退職金」として、法人からご遺族に支給することができます(社員総会・理事会の決議等の手続きが必要)。この死亡退職金には、相続税の計算上「500万円 × 法定相続人の数」までの非課税枠があり、生命保険金の非課税枠とは別に使えます。つまり、生前に受け取れなくても、適正な手続きを踏めば退職金はご遺族の生活資金として残せます。一方で、規程や決議の整備がないまま急逝すると、いくらを死亡退職金とすべきかの根拠が曖昧になり、税務上のトラブルや遺族間の混乱を招きます。だからこそ、退職金規程を整え、金額の考え方をあらかじめ決めておくことが、万一への備えになります。

退職金は相続・承継の「主役」です:退職金の支給は法人の純資産を圧縮するため、持分あり医療法人の出資持分の評価額が下がり、後継者への移転や相続税の負担軽減につながります。引退後の生活資金の確保と相続対策を同時に進められる、最も効果の大きい一手です。健康と意欲があるうちに、規程と原資の準備を進めておきましょう。
事業承継

事業承継 ── 「生きているうちに、計画的に渡す」

相続が「亡くなった後に財産を分ける」話であるのに対し、事業承継は「生前に、医院と経営を次へ引き継ぐ」取り組みです。相続とは別の、能動的な準備が必要です。

承継者の決め方 ── 専門性か、人柄か、仕事への取り組み方か

後継者を選ぶとき、つい専門性(診療技術・経歴)に目が行きがちです。もちろん診療の質は大前提ですが、医院を長く続けてもらううえで、専門性と同等か、それ以上に重要なのが「人柄」と「仕事に対する取り組み方」です。理由は明確です。技術は後からでも伸ばせますが、患者・スタッフ・地域との信頼関係は、人柄と日々の姿勢の上にしか築けないからです。

  • 専門性:必要条件。ただし「医院を継いだ後に学べること」も多く、これだけで決めると失敗します。
  • 人柄:患者が安心して通えるか、スタッフがついていきたいと思えるか。小さな組織であるクリニックでは、院長の人柄がそのまま医院の空気になります。
  • 仕事に対する取り組み方:経営をわがこととして引き受ける覚悟があるか。診療だけでなく、スタッフ・お金・地域に責任を持てるか。承継後の医院の浮沈を最も左右する要素です。

結論として、「専門性は最低ラインを満たしていることを確認し、最終的な決め手は人柄と仕事への取り組み方に置く」のが、長く続く承継の選び方です。親族内承継でも、子だからと無条件に継がせるのではなく、この3つの観点で冷静に見ることが、本人と医院の双方のためになります。

事業承継の3つの型

  • 親族内承継:医師である子・親族へ引き継ぐ最も一般的な形。後継者の意思確認と、継がない子との財産バランスの調整が課題です。
  • 親族外承継(従業員・勤務医承継):身内に後継者がいない場合に、信頼できる勤務医へ経営を譲る形。承継の対価や運営の引き継ぎを丁寧に設計します。
  • 第三者承継(M&A):外部の医師・医療法人へ事業を譲渡する形。患者と地域医療を残しながら、院長は譲渡対価を引退後の資金にできます。後継者不在時代の有力な選択肢として近年増えています。

承継を成功させる進め方

  • 早く始める:承継は数年がかりの取り組みです。後継者の育成、患者・スタッフへの引き継ぎ、法人・財産の移転には時間がかかります。60代に入ったら着手するのが目安です。
  • 「経営」と「診療」を分けて引き継ぐ:診療技術だけでなく、資金繰り・労務・対外関係といった経営ノウハウの引き継ぎが、承継後の安定を左右します。退職金の分掌変更を使い、院長が段階的に経営を譲りながら一定期間伴走する形が有効です。
  • 後継者の資金負担に配慮する:持分や事業用資産の取得、他の相続人への代償金など、後継者には資金負担が生じます。生命保険・分割の工夫・認定医療法人制度などで負担を軽くします。
  • 患者・スタッフ・取引先への配慮:承継は「人」の引き継ぎでもあります。患者の信頼、スタッフの雇用継続、取引先との関係を円滑につなぐことが、医院の価値を守ります。

承継と相続・退職金は一体で設計する

事業承継・相続・退職金は、本来バラバラに考えるものではありません。院長が退職金で引退後資金を確保し、経営権を後継者へ移し、残る財産を遺言・保険で相続人に配分する── この3つを一つの設計図として描くことで、初めて「医院も、家族も、患者も守れる承継」が実現します。

後継者不在でも、選択肢はあります:「子が継がない=閉院しかない」ではありません。第三者承継(M&A)なら、長年築いた医院と患者を次の医師に託し、スタッフの雇用も守りながら、院長は対価を得て引退できます。閉院を決める前に、承継の道を検討する価値は十分にあります。
M&A

身内に後継者がいない場合 ── M&Aという選択肢

身内に承継候補者がいない場合はどうなるのか

お子さまが医師にならなかった、継ぐ意思がない、適当な親族もいない── 後継者不在は、いまや多くの開業医が直面する現実です。後継者がいない場合の出口は、大きく2つです。①第三者承継(M&A)で医院を引き継いでもらう、②閉院する。かつては閉院が一般的でしたが、閉院は設備の処分・スタッフの解雇・患者の行き場という問題を伴い、何より長年かけて築いた医院の価値がゼロになります。そこで近年、有力な選択肢として広がっているのがM&Aです。

最近M&Aが増えているが、どうしたらいいのか

医院のM&A(第三者承継)は、後継者を探している医師や、分院展開を進める医療法人へ、医院を引き継いでもらう仕組みです。進め方の基本は次のとおりです。

  • まずは現状の価値を把握する:自院がいくらで評価されるのか、何が強みかを知ることがスタート地点です。決算書・患者数・立地・スタッフ体制などから概算の評価を出します。
  • 早めに動く:M&Aは相手探しから成約まで半年〜数年かかることもあります。体力・意欲のあるうちに、好条件で引き継げる相手を時間をかけて探すのが理想です。追い込まれてからの売却は足元を見られます。
  • 信頼できる仲介に相談する:医院M&Aは医療法・許認可・診療報酬が絡む専門領域です。医業に詳しい仲介会社・会計事務所を通じて、適正な相手と条件を探します。当事務所でもご相談をお受けしています。
  • 秘密保持を徹底する:売却を検討していることがスタッフや患者に漏れると動揺を招きます。情報管理を徹底して進めます。

M&Aのメリットとデメリット

メリットデメリット・注意点
院長は譲渡対価(現金)を得て引退できる必ず希望額で売れるとは限らない(買い手次第)
患者・地域医療を途切れさせずに残せる相手探し〜成約まで時間がかかることがある
スタッフの雇用を引き継いでもらえる(交渉次第)引き継ぎ後の方針が変わり、スタッフ・患者が離れる可能性
閉院に伴う原状回復・廃業コストを避けられる仲介手数料などのコストがかかる
後継者教育の負担なく事業をバトンタッチできる譲渡後の一定期間、引き継ぎのため診療や立ち会いを求められることがある

医院はいくらくらいで売れるのか

医院の譲渡価格に決まった定価はなく、買い手にとっての魅力で決まりますが、実務では「営業権(のれん)+ 引き継ぐ資産(医療機器・内装等の時価)」で大まかに評価されます。営業権の目安としてよく使われるのが「年間利益(役員報酬控除前の営業利益など)の2〜3年分程度」という考え方です。例えば年間の利益が2,000万円なら営業権は4,000万〜6,000万円が一つの目安となり、これに設備等の評価が加わります。ただし、立地・診療科・患者基盤(レセプト件数)・スタッフの定着・建物の賃貸借条件・自由診療比率などによって価格は大きく変動します。患者がしっかりついていて黒字が安定している医院ほど高く評価され、院長個人の腕に依存した医院は評価が下がる傾向があります。正確な金額は、決算書を基にした個別の査定が必要です。

成約した場合の手数料はいくらかかるのか

M&Aを仲介会社経由で進めた場合、成約時に仲介手数料(成功報酬)がかかります。料率は譲渡金額に応じた「レーマン方式」がよく使われ、一般的には譲渡額5億円以下の部分で5%程度(金額が大きくなるほど料率は段階的に下がる)が目安です。多くの仲介会社には最低手数料が設定されており、その水準は会社により幅がありますが、おおむね数百万円〜2,000万円程度とされることが多く、小規模な医院ほど「料率より最低手数料」で総額が決まる点に注意が必要です。このほか、着手金・中間金がかかる契約形態もあれば、完全成功報酬型(成約まで無料)の会社もあります。契約前に「何に・いつ・いくらかかるか」を必ず書面で確認することが大切です。

当事務所のM&A支援:湯沢会計事務所では、自院の概算評価(いくらで売れそうか)の試算、譲渡に向けた決算内容の整え方、医業に強い仲介の紹介、譲渡契約・税務面のチェックまでサポートします。手数料の妥当性や契約条件のセカンドオピニオンだけのご相談も歓迎です。「まだ売ると決めていないが、いくらになるか知りたい」という段階からどうぞ。
進め方

承継対策のステップ

  • ① 現状の棚卸し:医院・法人・個人の資産と負債、相続人、後継者候補を一覧にし、いま相続が起きたら何が起きるかを把握します。
  • ② 後継者の方針決定:子・親族・第三者(M&A)・閉院のどれを軸にするかを、本人の意思を確認しながら決めます。すべての対策はここから始まります。
  • ③ 法人・財産の承継設計:法人格に応じた経営権の移転、持分あり法人なら認定医療法人制度の検討、遺言・生前贈与・生命保険による財産分配の設計を行います。
  • ④ 退職金プランの組み立て:引退時期から逆算し、退職金の金額と準備方法を設計します。
  • ⑤ 実行と定期的な見直し:遺言・保険・規程を整え、税制改正や家族の状況変化に応じて毎年見直します。

これらは数年単位で進める対策です。相続税・会社法・医療法・社会保険が絡む複合的なテーマのため、税理士・行政書士・(必要に応じて)弁護士が連携して取り組むのが効果的です。

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