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クリニック・医療法人の節税をお考えの先生へ 最終更新:2026年6月

MS法人は使えるのか?
── 仕組み・医療法人との比較・税務リスク

MS法人(メディカル・サービス法人)とは、病医院に対していろいろなサービス業務を提供する営利法人のことです。合同会社・株式会社・一般社団法人など、形態を問わず設立できます。「節税になると聞いたが本当か」「医療法人と何が違うのか」「税務署に否認されないか」── 結論から言えば、MS法人は正しく使えば今も有効、雑に使えば最も否認されやすい仕組みです。医業専門の湯沢会計事務所が、仕組みから医療法人との比較、税務リスクの対処法までをコンパクトに解説します。

基本構造
医療と経営の分離
業務委託・賃貸・物販を通じて利益を分散
守るべき規制
役員の兼務制限
院長・医療法人役員とMS法人役員の兼務は原則不可
否認を防ぐ生命線
実態適正価格
人・物・金の実体+世間相場ベースの取引価格
仕組み

MS法人で何ができるのか

医師・医療法人
医療行為に専念
(看護師等の医療スタッフを雇用)
業務委託料・賃料
物品代金
MS法人
経営・周辺業務を担当
(事務スタッフ等を雇用)

利益分散の仕組み

事務スタッフの人件費や物品の仕入をMS法人に移管し、医療機関がMS法人へ業務委託料・賃料等を支払うことで、医療機関に集中していた利益の一部をMS法人側へ分散します。例えば診療報酬1,000万円の医院で、業務委託料450万円をMS法人に支払えば、利益は「医療側400万円+MS法人側100万円」のように分かれます。これにより、所得税の超過累進税率を法人税の比例税率に置き換え、家族への所得分散、青色専従者給与より高い給与の支給、役員退職金、生命保険の活用、株式による相続対策まで、節税の選択肢が広がります。

MS法人ができる業務 ── 6つの分野

  • 物品の販売:医療機器・診療材料・雑貨消耗品の販売(高度管理医療機器等は許可が必要)
  • 請負業務:受付・経理・保険請求事務・経営指導・清掃・給食・リネン・患者送迎など
  • 人材派遣:事務職員・介護職員の派遣(免許必要。医療職は紹介派遣のみ)
  • 不動産・動産の賃貸:クリニック建物・自宅(社宅)の賃貸、医療機器のリース・レンタル
  • 保険代理店:医院の損害保険・生命保険の代理店業務
  • 介護保険事業:訪問看護・訪問介護・通所介護・福祉用具レンタル等(事業者指定が必要)

※いずれも、業務を始める前に許認可の要否の確認が必須です。

比較

医療法人との比較 ── 対立ではなく「併用」が正解

項目医療法人MS法人(株式会社・合同会社等)
性格非営利(剰余金の配当禁止)営利法人(株式会社なら配当も可能)
できる業務医療・附帯業務に限定定款に記載すればどんな業務でも可能
設立都道府県の認可制(受付は年2回程度)登記のみで設立可能(合同会社なら実費6〜10万円程度)
承継・相続持分なし(2007年以降設立)。出資の概念がない株式を後継者に持たせる相続対策が可能
主な規制毎年の事業報告・経営情報報告、登記義務、役員要件医療機関の役員との兼務制限(平成24年厚労省通知)、医療法人との取引は「関係事業者との取引の状況に関する報告書」の対象になり得る
税制上の関係併用すれば中小法人の軽減税率(所得800万円まで15%)を両方で使え、交際費の損金算入枠も2法人分(800万円×2)に広がる

節税策の正しい順序は「①個人開業 → ②医療法人化 → ③MS法人設立」

MS法人は医療法人の代わりではなく、医療法人と組み合わせて使う仕組みです。実務上、利益移転が否認されるのは「個人 対 MS法人」のケースが多く、「医療法人 対 MS法人」の法人間取引の方が、委託料の設定にも相対的に余裕があります(ただし不相当な部分は寄附金課税のリスク)。また、MS法人を先に作ると医療法人の設立認可で苦労することがあるため、順序の設計が重要です。

役員の兼務規制に注意

平成24年3月30日の厚生労働省通知により、個人開設の院長・医療法人の役員は、MS法人の役員を兼務しないことが原則です(賃料が適正な建物賃貸借がある場合や取引額が少額な場合などの例外あり)。実務では、配偶者やご家族がMS法人の代表となる設計が基本形になります。

第3の選択肢:一般社団法人

一般社団法人には業務制限がないため、クリニックの開設とMS法人的な業務を1つの法人で行うことも可能です。医療法人が受ける規制(設立認可・毎年の報告義務・理事長の医師要件・関係事業者取引の報告)を受けない一方、非営利性の審査や同族役員比率による相続税の論点(特定一般社団法人等)など、固有の設計ポイントがあります。詳しくは一般社団法人・医療法人・個人開業の比較ページもご覧ください。

デメリット

先に知っておくべきコストとリスク

  • 事務負担とコストの増加:法人がもう一つ増える分、経理・申告・社会保険(MS法人は加入義務)のコストが増えます。メリットが上回る場合にだけ設立すべき仕組みです。
  • 医療法人との取引は都道府県への報告対象:医療法人がMS法人と一定規模の取引(例:事業費用の10%以上かつ1,000万円以上 等)を行うと、毎年度「関係事業者との取引の状況に関する報告書」の提出が必要になり、取引は行政からも見える状態になります。
  • 事業税・消費税:社会保険診療の所得は事業税が非課税ですが、MS法人に移った所得には法人事業税が課税されます。また課税売上高が1,000万円を超えれば消費税の納税義務も生じます。節税効果はこれらを差し引いた正味で判断します。
  • 最大のリスクは「行為計算の否認」:取引に合理性・妥当性がなければ、同族会社の行為計算の否認(法人税法132条等)により取引そのものを否認され、個人側は経費にならず、法人側は収入に計上される最悪の二重課税状態もあり得ます。
否認させない

税務調査で否認されないための3つの備え

① 法人の実態 ──「人・物・金」をそろえる

人:専属の従業員がいて、給与が実際に支払われ、社会保険に加入し、就業規則・雇用契約書がある。物:専用の事務所・電話・備品があり、家賃・水道光熱費を自ら払い、契約書・請求書・領収証が揃っている。金:取引は契約書に基づき実際に決済され(経費計上だけの未払いはNG)、院長個人への貸付金を放置しない。── 名前だけのペーパーカンパニーは、取引すべてを否認されるリスクを抱えます。あわせて、特定の医療機関だけでなく他の医療機関や一般顧客からも仕事を受けることが、独立した事業法人としての何よりの証明になります。

② 取引価格の適正化 ── 目安を持ち、毎年見直す

当事務所が実務で用いる価格設定の目安は、リース料=取得価額×1.2〜1.3倍÷リース期間、医薬品・材料の販売=原価×1.2倍程度、保険請求事務=請求額×3%程度、業務請負=人件費×1.3〜1.5倍、清掃=1㎡あたり100〜300円、不動産賃料=近隣相場ベース、といった水準です(あくまで目安です)。重要なのは、一度決めた価格を放置せず、最低でも年1回見直すこと。過去の裁決事例では、高額な管理料・賃料・仕入価格が繰り返し否認されている一方、業務の実態と対価性を示せた納税者の主張が認められた事例もあります。勝敗を分けるのは常に「実態」と「根拠」です。

③ 説明できる申告にしておく ── 理論武装と書面

「なぜMS法人を通すのか?」への答え(医業以外を法人に任せて医業に専念するため)を、契約書・業務仕様書・報酬基準とセットで用意しておきます。当事務所では業務請負契約書・業務仕様書のひな型を整備しており、さらに税理士法33条の2の書面添付により、取引の内容と根拠を申告段階から税務署へ示す体制を取っています。

結論:MS法人は「使えるのか?」

使えます。ただし、誰でも・いつでも得をする打ち出の小槌ではありません。①医療法人化を済ませた(または見据えた)うえで、②人・物・金の実態を整え、③世間相場に根拠を持つ価格で取引し、④役員兼務規制と報告義務を守る── この4つを満たした医院にとって、MS法人は所得分散・相続対策・事業多角化の有効な道具になります。逆に、実態のないMS法人は節税どころか最大の税務リスクです。

MS法人、先生の医院では「得」になるか試算します ── 節税のご相談

湯沢会計事務所は医業専門30年超。MS法人の設立可否のシミュレーション(事務コスト・事業税・消費税を差し引いた正味の節税効果)、法人形態(合同会社・株式会社・一般社団法人)の選択、業務請負契約書・業務仕様書の作成、取引価格の設計と毎年の見直し、関係事業者取引の報告書対応まで、設立から運用・税務調査対応までを一貫してサポートします。MS法人に限らず、医療法人化・家族給与・退職金まで含めた節税の総合相談も承ります。初回相談は無料です。

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