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開業後の先生へ 最終更新:2026年6月

クリニックの経営分析の方法

経営分析とは、感覚ではなく数字で自院の状態を把握し、次の打ち手を決めることです。難しい統計は要りません。毎月「同じ数字」を「分解して」「推移で」見るだけで、十分に機能します。このページでは、医業経営支援30年超の湯沢会計事務所が、医業収入の分解の仕方から、見るべき経営指標、推移・比較の読み方、そして月次決算・資金繰りの回し方までを、実務に沿って解説します。

分析の出発点
患者数×単価×日数
収入をこの3要素に分解する
人件費率(医業収益比)
目安 20〜30%
院長報酬を除く。診療科で差
分析のサイクル
まず月次
年1回の申告では遅すぎる
1. なぜ必要か

なぜ経営分析が必要か

クリニックは、診療に追われるうちに1年が過ぎてしまいがちです。気づいたときには「忙しいのにお金が残らない」「人件費が重い気がするが適正なのか分からない」という状態に陥ります。経営分析は、その「なんとなく不安」を具体的な数字と原因に置き換える作業です。

  • 問題を早く見つける:数字の異常は、患者離れ・コスト増・資金ショートの予兆です。早く気づくほど打ち手の選択肢が増えます。
  • 打ち手を具体化する:「売上を上げる」では動けません。「単価が落ちている→算定漏れを点検する」まで具体化できるのが分析の力です。
  • 意思決定の根拠になる:増員・設備投資・自由診療の導入・法人化── 大きな判断ほど、数字の裏づけが必要です。
あわせて読む:診療体制・患者数・収益・人材など、経営そのもののポイントは「医院経営のポイント」のページにまとめています。本ページは、その状態を「数字で読む」ための方法編です。
2. STEP1 分解

STEP1 ── 収入を3つの要素に分解する

クリニックの医業収入は、たった3つの掛け算に分解できます。「どの数字が動いたのか」が分かると、打ち手が一気に具体的になります。

医業収入 = 1日平均患者数 × 患者単価 × 診療日数
  • 患者数が動いたとき:集患の問題。広告・評判・アクセス、再診率(離脱)を点検します(→広告新規患者)。
  • 単価が動いたとき:診療内容・算定の問題。算定漏れ・施設基準・自由診療を点検します(→保険点数自由診療)。
  • 日数が動いたとき:カレンダー要因。休診日・連休・臨時休診の影響。前年同月比で「日数あたり」に直して比べます。
ポイント:収入が落ちた月も、3要素に分けると「単に診療日が2日少なかっただけ」と分かることがあります。分解は、不要な不安と本当の問題を切り分けてくれます。
3. STEP2 指標

STEP2 ── 経営指標で状態を診る

下表が、クリニックでまず押さえたい経営指標です。すべてを毎月見る必要はありません。自院の課題に合わせて3〜5個に絞り、定点観測します。

分析の視点主な指標目安・見方(クリニックの一般例)
収益性医業利益率、保険/自費の構成比固定費(家賃・人件費・リース)を賄えているか。自費比率の推移
患者動向1日平均患者数、新規/再診比率、レセプト枚数前年同月比で見る。新規・再診のバランス
単価レセプト単価、患者1人あたり収入算定漏れ・施設基準の取得状況を反映
人件費人件費率(対医業収益)目安20〜30%(院長報酬除く)。超過が続くなら体制の見直し
医薬品・材料費医薬品費率診療科で大きく異なる。在庫・廃棄ロスの管理
損益分岐点損益分岐点患者数「1日何人来れば赤字にならないか」。返済額に直結
安全性手元現預金(月商比)、借入返済比率手元資金は月商の2〜3ヶ月分を確保したい

特に重要な2つ ── 人件費率と損益分岐点

  • 人件費率:クリニック最大の固定費。医業収益に対して20〜30%(院長報酬を除く)が一つの目安。これを継続的に超えるなら、人員配置・シフト・生産性を見直すサインです。
  • 損益分岐点患者数:「1日に何人来れば赤字にならないか」。固定費(家賃・人件費・リース・借入返済)を患者単価で割って求めます。開業時の返済額が大きいほど、この数字は高くなります。
4. STEP3 比較

STEP3 ── 推移と比較で読む

指標は「絶対値」より「動き」が大切です。単月の数字だけを見て一喜一憂しないための、3つの見方です。

  • 時系列(推移)で見る:単月で判断せず、12ヶ月の折れ線・移動平均で傾向をつかみます。じわじわ下がる線は、急落より見逃しやすく危険です。
  • 前年同月比で見る:内科・小児科・耳鼻科など季節変動のある診療科は、前月比より前年同月比が実態を表します。
  • 同規模・同科目と比較する:TKC「BAST」などの業種別経営指標や、税理士が持つ同規模クリニックのデータと比べると、自院の人件費率・利益率が「高いのか低いのか」が客観的に分かります。自院の数字だけ見ていても「普通かどうか」は判断できません。
5. STEP4 月次

STEP4 ── 月次決算・資金繰りで「早く」気づく

分析の効果は「スピード」で決まります。年1回の確定申告で1年分をまとめて振り返るのでは、気づくのが遅すぎます。

  • 月次決算を回す:毎月、試算表で収支と資金繰りを確認します。問題をその月のうちに見つけ、翌月に持ち越さないことが年間の差になります。
  • 資金繰り表を作る:利益が出ていても現金がショートする「黒字倒産」を防ぐため、入金・支払・借入返済・税金・賞与の予定を表にして先を読みます。
  • 異常値の原因をその場で潰す:「なぜこの月は患者が減ったか」「なぜ医薬品費が跳ねたか」を、記憶が新しいうちに突き止めます。
利益と資金は別物です。賞与・納税・借入返済・設備の購入は、損益計算書には費用として出ないものも含め、現金を大きく動かします。「儲かっているはずなのに通帳が減る」を防ぐのが資金繰り表の役割です。
6. 打ち手へ

分析を「打ち手」につなげる

分析は、レポートを作って満足するためのものではありません。次の行動を決めて、初めて意味を持ちます。課題別の代表的な打ち手を整理します。

分析で見えた課題主な打ち手
患者数が伸びない広告・MEO・口コミ対策、診療日・診療時間の見直し、再診率(離脱)の改善
単価が低い算定漏れの点検、施設基準の届出、自由診療の導入、検査・処置の院内完結
人件費が重いシフト・人員配置の見直し、業務効率化(DX)、評価・給与制度の整備
利益は出るが現金が残らない資金繰り表の作成、借入の返済計画見直し、納税・賞与の事前準備、節税・法人化の検討
そもそも数字が把握できないレセコン・会計データの月次化、顧問税理士による月次レポートの導入
あわせて読む:各打ち手の詳しい考え方は「医院経営のポイント」、法人化による税負担の変化は医療法人化のページをご覧ください。

自院の数字を、いちど一緒に「読んで」みませんか

湯沢会計事務所は医業経営支援30年超。毎月の試算表を「ただ作る」だけでなく、患者数・単価・人件費率・損益分岐点・資金繰りまでを読み解く月次経営レポートをご提供し、課題と打ち手を院長と一緒に考えます。同規模クリニックとの比較データもご用意しています。「自院の数字が普通なのか知りたい」という入口のご相談も歓迎です。初回相談は無料です。

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