クリニックの経営は、開業して患者さまが来れば自然に回るものではありません。診療日と診療時間の設計、患者数とレセプトの管理、収益の伸ばし方、そして人(スタッフ)のマネジメント──この4つを、数字を見ながら少しずつ整えていく営みです。このページでは、医業経営支援30年超の湯沢会計事務所が、押さえるべき経営のポイントを箇条書きで整理しました。把握した数字を「どう読むか」という経営分析の方法は、別ページで詳しく解説しています。
| 分類 | No. | 項目 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 診療体制・ 基本指標 |
1 | 診療日・診療時間・休診日の設計 | 来院しやすさと、院長・スタッフの持続可能性を両立する |
| 2 | 経営の基本指標 | 診療日数・実日数・レセプト枚数の意味と見方 | |
| 3 | 新規患者数の目安 | 立ち上がりの目安と、再診へつなげる仕組み | |
| 収益を 伸ばす |
4 | 保険点数(算定)を上げる方法 | 施設基準の届出と、算定漏れの防止(適正算定) |
| 5 | 自由診療収入への取組 | 保険外で診療単価と経営の安定性を上げる | |
| 6 | 効果的な広告方法 | MEO・ホームページ・口コミ(医療広告ガイドライン遵守) | |
| 人材・ 労務 |
7 | 優秀なスタッフの集め方 | 求める人物像の明確化と採用チャネルの併用 |
| 8 | スタッフの定着率を高める方法 | 労働環境・評価・教育で離職を防ぐ | |
| 9 | 問題のあるスタッフに退職してもらう方法 | 記録→指導→退職勧奨→解雇の順序で(不当解雇・パワハラを回避) | |
| 10 | 給与の決め方・賞与の相場 | 相場と支払能力から設計(賞与は年2回 計2〜4ヶ月が目安) | |
| 11 | 退職金対策 | 中退共・小規模企業共済などで計画的・税効率的に |
▶ 把握した数字の読み方は 「経営分析の方法」 をご覧ください。
診療体制は「患者さまの来やすさ」と「院長・スタッフの持続可能性」の両立で決めます。最初に決めた枠が経営の上限を作るため、開業時の設計が極めて重要です。
クリニックの収入は、つきつめると「患者数 × 単価 × 日数」に分解できます。その材料になる基本の数字を押さえます。
| 指標 | 意味 | 目安・見方 |
|---|---|---|
| 診療日数 | その月にカレンダー上で診療した日数 | 月20〜23日 / 年240〜280日(休診日設計による) |
| 実日数 | レセプト上の「実際に診療行為を行った延べ日数」。同じ患者が月2回来れば実日数は2 | 再診中心の内科系は1人あたり月1.3〜2.0回が目安 |
| レセプト枚数 | その月に算定した診療報酬明細書の枚数。原則「患者1人・保険1種類につき月1枚」 | ≒ その月のユニーク患者数。月間の延べ患者数とは別物 |
| 1日平均患者数 | 延べ患者数 ÷ 診療日数 | 損益分岐の最重要指標。開業初期は少なく、年々積み上げる |
| レセプト単価(点) | 医業収入(保険分) ÷ レセプト枚数 | 診療科・処置・検査・加算の構成で大きく変動 |
新規患者は「未来の再診患者」の源泉です。開業後の成長カーブは、新規患者をどれだけ安定的に獲得し、再診につなげられるかで決まります。
ここで言う「点数を上げる」とは、不正な水増し(架空・付増し請求)ではなく、本来算定できる点数を適正に算定し、算定漏れをなくす取り組みです。適正な算定こそが最大かつ正攻法の収益改善です。
診療体制を整えて地方厚生局へ届け出ることで算定できる加算があります。自院の体制に合うものを取りこぼさないことが重要です。
保険診療は単価が公定価格で頭打ちになりがちです。自由診療(自費)は、診療単価と経営の安定性を引き上げる柱になります。ただし、保険診療との線引きと患者説明を丁寧に行うことが大前提です。
医療機関の広告には医療広告ガイドラインという規制があります。「治る」「絶対安全」などの誇大・断定表現や、ビフォーアフター写真の不適切な使用は禁止です。ルールの範囲で、地域の患者さまに「正しく見つけてもらう」ことが広告の目的です。
クリニックの満足度は、院長の診療と同じくらい「受付・看護師・スタッフ」で決まります。採用は経営の最重要テーマの一つです。
採用には1人あたり数十万円の採用コストと教育期間がかかります。離職を減らすことは、採用を増やすより効率的な経営改善です。
勤務態度や能力に問題のあるスタッフへの対応は、院長が最も悩むテーマの一つです。日本の法律では一方的な解雇が厳しく制限されているため、「いきなり辞めさせる」のではなく、記録 → 指導 → 退職勧奨 → (最後の手段としての)解雇という順序を踏むことが、トラブルを避ける最大のコツです。
人件費は医業収益の20〜30%(院長報酬を除く)を占める最大の固定費です。「払いすぎ」も「安すぎ」も経営を傷めます。地域相場と自院の収益力のバランスで決めます。
クリニックの賞与は年2回(夏・冬)、合計で基本給の2〜4ヶ月分が一つの目安です。中小企業・地域・業績によって幅があり、開業初期は抑えめ、軌道に乗ってから手厚くするのが無理のない設計です。
退職金は「スタッフの定着・採用力の向上」と「院長自身の引退後の備え」の両面があります。制度を使って、計画的・税効率的に積み立てるのが基本です。
ここまでが医院経営のポイントです。診療体制・患者数・収益・人材を整えたら、次はその結果を数字で読み解く番です。
経営分析とは、感覚ではなく数字で自院の状態を把握し、次の打ち手を決めることです。収入を「患者数×単価×日数」に分解し、人件費率や損益分岐点などの指標を月次で追うことで、問題に早く気づき、具体的に動けるようになります。
具体的な分析の手順(収入の分解・経営指標の見方・推移と比較・月次決算と資金繰り)は、別ページにまとめました。
「忙しいのに、なぜか手元にお金が残らない」「人件費が重い気がするが適正なのか分からない」── そう感じたら、それは経営分析の出番です。湯沢会計事務所は医業経営支援30年超。月次決算・経営分析レポートの提供から、診療体制・人件費・自由診療・施設基準の見直し、スタッフの給与・退職金制度の設計、医療法人化の判断まで、クリニック経営を数字の面から一貫してサポートします。初回相談は無料です。
医院経営の無料相談を申し込む医業収益の20〜30%(院長報酬を除く)が一つの目安です。継続的に超える場合は、人員配置・シフト・生産性の見直しのサインです。
年2回・合計で基本給の2〜4ヶ月分が一つの目安です(地域・業績・規模で変動します)。
不正な水増しではなく、施設基準の届出と算定漏れの防止という「適正な算定」が正攻法です。返戻・査定の分析も有効です。