個人開業医が開設・管理できる診療所は実質1ヶ所に限られます。分院、サテライト、在宅部門、介護事業──事業を広げる構想があるなら、医療法人化はその前提条件になります。
医療法上、診療所の管理者(院長)は原則として他の診療所の管理者を兼ねられず、個人開業医は事実上1人1診療所です。医療法人であれば、定款を変更して複数の診療所を開設し、それぞれに管理者となる医師を置くことで分院展開が可能になります。訪問看護ステーションや、医療法人の附帯業務として認められる介護サービス等への多角化も、法人という器があって初めて選べる道です。
分院には常勤の管理者(医師)が必要です。信頼できる分院長を採用・処遇できるかが分院計画の成否そのものであり、報酬設計(本院とのバランス)、将来の独立リスク、診療方針の統一まで含めた人事設計が求められます。
分院開設には定款変更認可、診療所開設許可、保険医療機関指定と、本院開設時と同等の手続・設備投資が再び発生します。本院の内部留保と借入余力が分院投資の原資です(判断要素05)。
分院が赤字でも法人全体では見えにくくなるため、拠点別の月次損益管理が必須になります。どこまで本院が分院を支えるか、撤退基準を含めて事前に決めておくべきです。
施設が増えるほど、理事会の運営、労務管理、医療安全の体制整備といった本部機能が必要になります。分院展開とは、院長が「診る人」から「経営する人」へ役割を変えることでもあります。
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